久々のブログ更新

久々にVoice(10月号)を購入した。
チェックしたかった記事は、「特集 これでいいのうか、アベノミクス」片岡剛士氏の「リフレ政策を再起動させよ」だ。
2015年の4−6、7−9、10−12そして2016年1−3、4−6のGDPの実績数値から見ていくと、民間消費、民間投資、輸出の低迷が認められ、アベノミクスの肝である大胆な金融政策と機動的な財政政策がうまく機能していないことが原因と指摘している。日銀の金融政策は量、質に加え金利を緩和手段に加えマイナス金利を導入したが、信用創造機能の中核である銀行の経営を圧迫する副作用のほうが強く出てしまっていることを問題としている。財政政策においては「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定したが、真水額が過少であり、これは政府が財政健全化を意識するあまりに大胆な政策に踏み切れない「臆病者の罠」(クルーグマン)に陥っていると指摘。経済政策の両輪である財政・金融政策の再構築が必要と問題提議している。
ちなみに、「未来への投資を実現する経済対策」については、本誌のニッポン新潮流で飯田泰之准教授が「短期経済政策が未来への投資を実現する」に(財政政策、金融政策ともに)「絶え間ない短期経済政策が継続的に行われることへの信任を得ることこそが、いま必要な経済政策なのである。」と締めくくっている。
今週は日銀の金融政策決定会合に注目が集まるが、まずは再度レジームチェンジの期待を増幅させることができるのか?を見ていきたいところだ。


「不平等論 On Inequality」を読了した。
訳者でもあり本書の解説者でもある山形浩生さんの訳本。
なかなか手強い内容の本だったな。まぁ哲学が専門の名誉教授の著書だけあって、哲学的で抽象的な議論になっていて読み慣れていない私にとっては理解できそうで理解できない、なんとも難解な本という印象か。
この哲学者の格差論の柱になっているのが、平等主義はなんら道徳的な価値はいっさい関係ない!ってことに終始している点。第三者が格差を問題視し格差是正のために万人は平等に均等に同じものを所有するもしくは分配するっていう考えを真っ向から否定し、重要なのは万人が十分に所有することであると、他人と比較してなにの意味があるのか?重要なのは自分がどうなのか?であると!
訳者の解説が本文とおなじくらいのページ数を割いて、著書の議論に踏み込んでいこうとしているところも面白く、本文と同じくらいに読む価値があるかな。訳者は著者の経済的平等主義にまったく道徳的価値はなしとの議論に一定の理解を示しつつも、この哲学的でかなり狭い中での議論に危険性をはらんでいるとも指摘している点が興味深い。
とはいいつつも日本の中でこの格差議論を取り上げる際に、その論者の偏った価値観だけで議論が展開される場面をよく目にすることがあるが、このような場面においては「平等主義にはいっさいの道徳的価値はなし!」というのがドンピシャだと思うのだが、どうなんだろうね?

不平等論: 格差は悪なのか? (単行本)

不平等論: 格差は悪なのか? (単行本)